■奴隷の反乱が広範囲で起きているアリの世界
(Slave rebellion is widespread in ants:10月3日英語版配信分)


Source: http://www.uni-mainz.de/presse/15733_ENG_HTML.php


奴隷の身となった働きアリたちは、彼らの寄生者の子を殺し、そうやって仲間
たちが存続する可能性を増大させている。


2012年9月26日


他の種類のアリの巣で奴隷として留められているアリたちは、妨害という行為
を通じて自身の抑圧者たちにダメージを与える。ヨハネス・グーテンベルク大
学マインツ(JGU)でアリを研究しているSusanneFoitzik博士/教授は2009年、
この「奴隷の反乱」現象を初めて観察した。しかしながら、最新の発見による
と、この振る舞いは単発的な出来事にはとどまらず、今では広範囲に見られる
特性のようなのだ。実際のところ、米国のウェストバージニア州、ニューヨー
ク州、オハイオ州にある3つの異なる個体群でも、奴隷の身になった
Temnothorax longispinosusという種類の働きアリたちは、他種のアリの巣を
襲い、若虫をさらって奴隷に育てるProtomognathus americanusという種類の
アリには構わず、その子たちの面倒を見るどころか殺すことが観察されている。
その結果、その寄生虫の子供たちの平均生存率は45%にしか及ばない。恐らく
このことによって、その地域において寄生虫が強化されることが抑えられ、そ
れによって、奴隷になったアリの仲間たちが占めている近隣のコロニーが生き
残るチャンスは高められているのだ。

全動物種のうち半数以上は、寄生関係をもって、すなわち俗にいう宿主を利用
して生きている。進化史の観点から見ると、奴隷をつくる米国のProtomognathus
americanusというアリは、生き残るため他の種類のアリに完全に依存している
昔からの社会的な寄生種である。奴隷の働きアリたちは、寄生虫の巣で子供た
ちの面倒をみたり、主人たちに食料を運んで食べさせたり、さらには巣の防衛
すらしなければならない。

奴隷をつくる種の働きアリたちは、宿主であるTemnothorax longispinosusと
いう種の巣に攻撃を行い、大人のアリたちを殺して子供たちを奪い去り、奴隷
とする。中身のなくなったどんぐりや木の実の殻、あるいは中空の小枝を住み
家とすることもある主人たちの巣に戻ると、成長過程にある奴隷の働きアリた
ちが、主人たちの子供を世話する行動は、奴隷をつくる種属の発展に利用され
る。Susanne Foitzik女史とその研究チームは、奴隷の身となった働きアリた
ちが、幼虫に餌を与えて身の回りの世話をし、自分たちに取りつく社会的な寄
生者の子供を育てはするものの、それはある一定の時期までに限られることを
示した。

「恐らく初めのうちは、奴隷のアリたちは、幼虫が他の種属のものであるとい
うことの見分けがつかないのでしょう」とFoitzik女史は説明する。その結果、
子供の95%が幼生期を生き残ることになる。「すでにアリの様相を呈している
サナギは、はっきりと嗅ぎ分けることのできる合図となる化学的な物質を、そ
の表皮上に作り出します。奴隷をつくるアリのサナギが、高い割合で奴隷となっ
た働きアリに殺される、ということを私たちは示すことが出来ました」サナギ
は放置されたり、意図的に攻撃を受けてバラバラにされ殺される。サナギはそ
の成長段階において自ら動いたり防御をとったりする事はできず、またマユに
よっても身を守られていない中、何匹かの奴隷アリが一斉にサナギに攻撃を仕
掛けるのだ。

ウェストバージニア州にある寄生虫の複数の巣では、サナギのわずか27%しか
生き残らず、ニューヨーク州のコロニーでは49%に留まっている。オハイオ州
では、奴隷を作る米国のアリの中では少しばかり生存率が高くて58%となって
いるが、それでもこの数字は、自由な生活を送っているアリの巣にいるサナギ
の85%という生存率には遠く及ばない。「奴隷となった働きアリたちは、繁殖
を行わないことから、殺すことによって直接的な恩恵は受けていません」と女
史は説明する。しかし、奴隷を作るアリの子供を殺すことを通して、まさに働
きアリの兄弟たちかもしれない近隣の身内たちは、生き残るチャンスが増大す
るという恩恵を間接的に受けている。奴隷を作るアリのコロニーが、反逆を起
こした奴隷によってダメージを被り、発展が鈍化してコロニーの運営が縮小化
し、奴隷の襲撃に対して脆弱となるのだ。

様々な地域のコロニーで死亡率が大きく異るというのは、共進化という地理学
的なモザイク説に由来する予測に適うものである。この理論では、地域によっ
て異なる選択圧(※)にさらされており、また突然変異を介して生じる様々な攻
撃特性や防御特性を保持するがゆえに、個体数は異なってくる、というのがこ
の理論の主張するところだ。


奴隷反乱の進化に関するこの研究は、「構造化された集団における抵抗力と病
原性の進化」というドイツ研究財団のプロジェクトによって2011年10月より資
金提供を受けて行われたものである。



(※訳注:選択圧とは適合度の低い個体の淘汰されやすさのことであり、これ
が高いほど探索の収束が早くなる。淘汰圧ともいう。)